世界の働き方比較!~労働時間や男女差、日本は世界の中で何位?~

現在の日本においては、労働時間は原則として「休憩時間を除いて週に40時間、1日8時間」と労働基準法で定められています。本記事では、労働時間や男女の働き方の違い・格差などについて、世界各国の中で日本はどのような位置にいるのかなどについて紹介していきます。
【目次】
・日本の労働時間は長いのか?
・世界の長時間労働の事情
・男女の働き方の違い
・世界の労働時間ランキング
・まとめ
【日本の労働時間は長いのか?】
「日本人は働きすぎ」「労働時間が長すぎる」「残業のしすぎ」などというイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。ですが、実際には次のようなデータが出ています。
OECD(経済協力開発機構)がまとめた「2023年の世界主要国の労働時間 国際比較統計・ランキング」の調査結果によると、日本の全就業者平均の1人当たりの年間実労働時間は1611時間となりました。1年間の勤務日数を250日とすると、1日の労働時間が6.4時間という結果になります。「あれ?日本人は思ったより労働時間が短いの?」と感じられたのではないでしょうか。ですが、この年間実労働時間にはフルタイム、パートタイム、年間の一時期のみ働く労働者の正規労働時間、有給および無給の時間以外労働、追加就業の労働時間が含まれます。また、休暇などの労働しなかった時間は含まないため、フルタイム労働者だけで統計を算出すれば、労働時間はもっと長くなるでしょう。
世界労働時間の平均は1742時間となっており、世界の中での日本の順位は46か国中31位となっています。世界の平均よりも日本は約100時間ほど少ない数値となっています。この結果により、日本は世界の中で労働時間が特に長いわけではなく、思っていたよりも短いことが分かったのではないでしょうか。
【世界の長時間労働の事情】
ここでは、週49時間以上働く世界の労働者の割合を男女計、男性のみ、女性のみの3つに分けてデータについて詳しく解説していきます。
<週49時間以上働く労働者の割合(男女計)>
まず、男女合わせた週49時間以上働く労働者の割合を見ていきます。日本だけ見ると2010年の割合が23.1%なのに対して2022年は15.3%に減少しています。7.8%も長時間労働者が減少しており、これは日本における働き方改革推進のたまものといえるでしょう。
諸外国ではタイが2010年37.6%から2022年17.2%と12年で20.4%の減少、韓国が37.0%から16.6%と21%も減少しています。その他の国では経年で計測が取れていない国もありますが、ここ10年以上で大きく時間労働が減少した国は少ないようです。直近の2022年だけを見ると、アメリカは12.5%で日本の15.3%とそれほど大きな差があるわけではありません。相対的にみると、ヨーロッパの諸外国が長時間労働の割合が低く、東南アジアの諸外国がまだ若干多く、南米や北米がその中間に位置しているようです。
<週49時間以上働く労働者の割合(男性のみ)>
続いて男性だけの割合を見ていきます。まずは男女計の数値と比較すると、どの国も長時間労働者の割合が顕著に大きいです。特に2022年のヨーロッパ諸国は、男女計の割合は10%未満の国がほとんどでしたが、男性だけになると10%を超えるかそれに近い割合にまで増えています。また、韓国とタイが2010年は40%を超えやそれに近いという高い割合だったのに対して、2022年には両国とも半減しているのは驚くべき数字です。逆に2010年から2022年の12年間の推移がほとんど変わらなかった、アメリカやポルトガルなどでは、特に働き方に対する意識に変化はなかったということがわかります。
<週49時間以上働く労働者の割合(女性のみ)>
最後に女性のみの長時間労働の割合を見ていきます。2010年と2022年の経年で比較してみると、日本は11.1%から7.2%へと減少しており、さらに韓国(29.1%→11.5%)やタイ(36.3%→17.4%)は著しく半分以下に減少しています。全体を見てみると他の国はさほど大きく減少している国は少ないように感じますが、10年以上前までは女性の長時間労働の割合が40%近く占める国もありました。このようにどの国も男性だけの割合と比較すると女性だけの割合の方が顕著に短いと感じることでしょう。
【男女の働き方の違いにも注目】
男性と女性との長時間労働の割合には大きなひらきがあることが前章にてわかったと思います。その大きな要因として、女性はパートタイム、年間の一時期のみ働く労働者の割合が多いなど、働き方自体に違いがあることが読み取れます。
日本においては、女性は正規雇用者として採用されにくいという問題だけではなく、意図的に被扶養者を選択する人がまだまだ多く存在するためです。具体的には、パートで働く主婦にとって扶養に影響する年収の壁というものが存在し、働きながら夫の扶養に入り、さらに税制面での控除を受けるために年収を調整する女性がいるということです。特に「103万円の壁」というのは、夫の扶養だけではなく、妻自身のパート代に所得税がかかり始める年収を指します。103万円を超えると、超えた分に対して所得税がかかります。現在は103万円を超える人のために配偶者特別控除が設けられ、妻の年収は150万円まで満額で受けられるようになりました。しかし、いまだに103万円を意識して働いている人は多いようです。
「女性はパートタイム労働が多い」という働き方の男女差については、日本だけに当てはまることではなく、世界的にパートタイム労働者における女性比率は大きいようです。The World Bankのデータでは、日本は52.9%(2020年)、ドイツ59.0%(2021年)、アメリカ31.1%(2021年)、イギリス56.2%(2019年)、フランス47.9%(2021年)、韓国34.7%(2021年)となっています。ただし、日本と世界では違いもあります。男女の賃金差について比較したデータでは、2022年時点の日本はOECD46か国中4位という結果になっています。その賃金差は男性の賃金の約22.1%に当たるとされていて、アメリカでは男女の賃金差は16.9%、最も格差の少ないベルギーではわずか1.2%となっています。つまり、日本は世界的に賃金の面で男女差が大きいことになります。パートタイム労働者における女性比率は世界的に大体同じであるのに、なぜ賃金差は大きな違いがあるのでしょうか。パートタイム労働者の比率が男女差の理由であれば、他の国でも日本と同様な男女賃金差が生まれるはずです。考えられることは、日本は正社員同士、パートタイム同士のあいだで、男女に賃金差があることが考えられます。ここで昇給や昇進など、日本における女性の働き方の課題が見えてきます。
【世界の労働時間 国別ランキング】
OECD統計をベースにした世界主要国の労働時間の国際比較統計・ランキングでは、各国の全就業者平均の1人当たり年間実労働時間と国別の順位を掲載しています。就業者とは給与所得者である雇用者、自営業者を含む全就業者を指しています。
労働時間とは、原則的に提示・残業、有給・無給にかかわらず実際に生産活動に従事していた時間となっており、休暇・有休休暇、昼食時間、OJT以外のトレーニング時間は含まれていません。
<2021年 年間労働時間 国別ランキング>
本記事の【日本の労働時間は長いのか?】でも解説しましたが、上記のランキングをみるように日本の労働時間はそれほど長くないということがわかります。また、世界平均時間が1,716時間ということからも世界平均よりも短いこともわかります。アメリカの方が日本人より200時間も多い実態を見ると、アメリカ人は日本人よりもよく働いていて、日本は働き方改革が進んでいるという見方もできるのではないでしょうか。
【まとめ】
世界の労働時間ランキングと男女における働き方について見てきました。日本は私たちが考えている以上に働き方改革が進んでいたり、労働時間が世界平均よりも少なかったりなど、改めて日本の現状を認識できたのではないでしょうか。
「日本は労働時間が世界平均よりも短いから良い国である」というような「時間」のみにフォーカスするのではなく、その働き方の中身にも目を向けていくということも同時に必要になってくると考えられます。